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東京駅を訪ねる|赤レンガ駅舎に重なる百年と、丸の内を歩く楽しみ

記事の最後に、おでかけに便利なこの記事に関する情報リンクを掲載しています。

東京駅で列車を降りたあと、そのまま地下通路へ向かっていませんか。

丸の内側の地上へ出ると、高層ビルの足元に、赤レンガの長い駅舎が横たわっています。頭上に広がる空と、横へ伸びる窓の列。乗り換えのときには気づかなかった建物の大きさが、ここでは目に入ります。

東京都千代田区丸の内にある東京駅は、日本各地への出発点であると同時に、それ自体を訪ねる楽しみのある場所です。

丸の内駅舎には、首都の中央駅をつくろうとした時代の構想、戦災を経て使い続けられた歳月、失われた姿を取り戻すための仕事が重なっています。

遠くから外観を眺め、ドームの下で天井を見上げ、建物の中に残るレンガを知る。そして広場から街へ歩き出す。歴史をいくつか頭に置くだけで、見慣れた東京駅にも、これまでと違う入口が見つかります。

各地へ伸びる線路の中心に、東京駅が生まれるまで

東京駅の開業は1914(大正3)年12月20日です。日本で最初の鉄道が新橋と横浜の間に開業した1872(明治5)年からは、40年以上が過ぎていました。

東京駅は、日本の鉄道の出発時点から存在した駅ではありません。各方面へ伸びていった鉄道を、首都の中心で結び直そうとする過程で生まれました。

計画段階の名称は「中央停車場」。方面ごとに分かれた鉄道の拠点をつなぎ、都市の交通を組み立てるための駅でした。

人の多い市街地に線路を通すには、道路との関係も考えなければなりません。高架鉄道の整備と駅の建設が結びついていたことを知ると、東京駅を単独の大建築として眺めるだけでは見えない、街全体の仕事が浮かびます。

いまも東京駅の面白さは、建物の向こうに数多くの行き先があることです。東海道・山陽新幹線で西へ向かう旅と、東北や北陸などへ向かう新幹線の旅。近郊の街へ通う電車と、空港や房総方面へつながる列車。

駅構内図を開くと、ひとつの駅が日本の地理と結びついている様子が見えてきます。

一方、赤レンガの外観だけでは、駅の内部の広がりは分かりません。地上のホームに加えて地下にも線路があり、乗る路線によって歩く方向や距離が変わります。「東京駅に着いたから、どの列車にもすぐ乗れる」と考えず、目的のホームと出口を確かめておくと、建物を楽しむ時間にもゆとりが生まれます。

駅を見る日は、発車案内の地名を一度ゆっくり追ってみるのもよいでしょう。仕事で向かう街、いつか訪ねたい土地、以前旅した場所。普段は乗る列車を探すための表示が、各地へ続く道筋として読めてきます。路線名を覚えていなくても、行き先から駅を楽しむことはできます。

ただし、駅舎の見学とホームの見学は分けて考えましょう。丸の内の広場や改札外のドームは、列車に乗らずに訪ねられる場所です。ホームなど改札内へ入る場合は、利用目的に合う乗車券や入場券等が必要になります。

今回はまず、駅の外と改札外から見える風景を中心に歩いてみます。

赤レンガの正面から、ドームの天井へ目を移す

丸の内駅舎を設計したのは辰野金吾です。現在、国の重要文化財に指定されている建物の名称は「東京駅丸ノ内本屋」。

駅全体のホームや地下街が一括してこの名称で指定されている、という意味ではありません。文化財としての建物と、交通施設として広がる東京駅を分けて捉えると、見学の焦点が定まります。

最初は駅舎に近づきすぎず、広場側から全体の釣り合いを眺めてみてください。南北へ長く伸びる建物は、窓や白い縁取りの繰り返しによって、横方向のつながりが強く感じられます。

中央の部分と南北のドームに目を移すと、長い外観の中に、視線が止まる場所が用意されていることにも気づきます。

そこから少し近づくと、印象をつくっていた赤と白が、レンガや石の細かな組み合わせに変わります。離れて見たときには一本の線だったものが、窓の縁や壁面の凹凸として立ち上がるのです。正面の写真を一枚撮ったあと、気になった窓をひとつ選んで見直すと、大きな駅舎に自分なりの観察の入口ができます。

次に訪ねたいのが、丸の内南口と北口のドームです。

建物を外から見たときの落ち着いた色合いに対し、内側には淡い黄色や白を基調とする装飾が広がります。足元を急ぐ人の流れと、頭上の広い空間。その高さの差を意識すると、普段の改札口が、まったく違う場所に感じられるかもしれません。

天井まわりには鷲のレリーフや干支の彫刻があります。干支は十二支すべてが並ぶのではなく、方位に従って八支が配置され、子・卯・午・酉は省かれています。「自分の干支はあるだろうか」と探してから配置を見渡すと、装飾がただ散りばめられているのではないことが分かります。

鷲や干支だけを探して終わらず、装飾の繰り返しにも目を向けてみましょう。角の部分、窓の上、中央へ向かう線。それぞれを順番に追うと、ばらばらに見えた模様がひとつの天井を形づくります。写真を拡大して細部を見る楽しみと、肉眼で空間の広がりを感じる楽しみは、少し違います。

ドームの下は、いまも駅を利用する人が行き交う場所です。立ち止まるときは通行の妨げにならない位置へ寄り、周囲を確認してから見上げましょう。人の流れを避けながら観察することも、現役の駅にある建築を楽しむための大切な作法です。

いま見える姿は、残した部分と取り戻した部分でできている

東京駅の古い写真を見る機会があれば、屋根と階数に注目してください。現在の姿と違い、丸の内駅舎が二階建てで、南北の屋根も違う形に見える写真があります。別の駅舎ではなく、戦後の長い期間、東京駅が実際に使われていた姿です。

1945(昭和20)年の空襲で、丸の内駅舎は屋根や三階部分などに大きな被害を受けました。1947(昭和22)年に復興した建物は二階建てとなり、創建時とは異なる屋根を載せて、その後も駅として使われます。

失われた姿がすぐに取り戻されたわけではなく、戦後の東京は、この駅舎とともに日々を重ねました。

2003(平成15)年の重要文化財指定を経て、2007(平成19)年に保存・復原工事が始まり、2012(平成24)年に完成します。ここで大切なのは、古い建物をすべて取り壊して同じ形に建て直したのではない、という点です。残せるものを保存しながら、失われた三階やドームの姿を復原する仕事でした。

外壁でも、二階以下には既存のレンガなどが保存され、復原された三階には新たにつくられた部分があります。駅舎の外観が一続きに見えるのは、その違いを無視したからではありません。新しく加える材料や形を、残された建物に調和させる工夫があったからです。

この背景を知ってから窓の列を見上げると、「古そうに見えるかどうか」だけでは建物の時間を判断できなくなります。見た目の新しさと、そこに受け継がれた歴史は、必ずしも同じではないからです。

創建時の材料を守ることと、失われた外観を伝えること。その両方が、いまの駅舎の中で重なっています。

昔の写真と見比べるなら、まず階数、次に南北の屋根、最後に窓の周りという順で追うと、違いをつかみやすくなります。細かな装飾の名前を知らなくても、輪郭から入れば十分です。

目の前の美しい姿の手前に、違う屋根で人を迎えていた時代があった。そのことが、駅舎を見る奥行きを増してくれます。

駅の中で過ごす時間|美術館のレンガとホテルの歴史

外観を眺めるだけでなく、駅舎そのものをもう少し知りたいときは、丸の内北口にある東京ステーションギャラリーが手がかりになります。1988(昭和63)年に開館した美術館で、企画展とともに、建物の一部を内側から見る楽しみがあります。

館内の見どころのひとつが、構造をあらわにしたレンガの壁です。外から見える、表面を整えるための化粧レンガと、建物を支える構造レンガは役割が異なります。展覧会で作品を見たあとに壁の表面にも目を向けると、駅舎の外観だけでは想像しにくかった建物の成り立ちに近づけます。

壁には、後からモルタルを塗るためにつけられた「目あらし」という傷も残ります。

均一で滑らかな新しい壁とは違い、ここでは表面の凹凸が過去の工事を伝えています。ただ古びていると受け取るのではなく、何のための痕跡なのかを館内の説明と合わせて確かめると、見え方が変わります。

美術館を訪ねるなら、建物だけを急いで見て回るより、関心のある展覧会と組み合わせて時間を取るのがおすすめです。絵や写真を見たあと、同じ建物を外から眺め直すと、窓の内側に展示室の時間が重なります。

開館日、入館条件、鑑賞できる範囲は、訪問前に公式案内を確認してください。

駅舎のもうひとつの顔が、1915(大正4)年に開業した東京ステーションホテルです。駅の開業から翌年に、旅人が泊まる場所もここに生まれました。戦災や休業を経験し、保存・復原後の2012(平成24)年には再び営業を始めています。交通の拠点に、滞在するための場所が組み込まれてきた歴史があるのです。

駅は目的地へ向かうために通り過ぎる場所、と考えがちです。しかし、美術館では作品の前に足を止め、ホテルでは旅の途中の時間を過ごします。同じ駅舎の中に異なる過ごし方があると知ると、長く並ぶ窓も、単なる外観の模様とは違って見えてきます。

ホテルは営業中の施設なので、客室や廊下を自由に見学できるわけではありません。

宿泊や飲食を楽しむなら、利用できる施設や条件を確かめて訪ねましょう。建物への関心から予定を一つ選ぶくらいが、駅を眺める散歩にはちょうどよい組み合わせです。

丸の内の広場から、街とのつながりを歩いてみる

東京駅を訪ねるときは、最初に「丸の内側へ出る」と決めておくと迷いにくくなります。赤レンガ駅舎があるのは西側です。反対の東側には八重洲口があり、同じ東京駅でも、地上へ出た先の景色が大きく変わります。地下の出口を使う場合も、地上で駅舎のどちら側に出るのかを確かめておきましょう。

丸の内側では、南口または北口のドームを見たあと、いったん広場へ出て建物を眺める順序が分かりやすいでしょう。屋内で見上げたドームを、今度は外側から探します。天井の形と屋根の位置が結びつくと、大きく見えていた駅舎に、自分が通った場所を見つけられます。

駅舎を背にすると、広場の先には皇居側へ向かう行幸通りが延びています。広場の両側には芝生やケヤキがあり、駅前の空間に緑の縁取りをつくっています。駅の正面を眺めるだけでなく、反対を向いて街を見渡すと、建物がどちらを向き、どのような空間に接しているのかが分かります。

広場での楽しみ方は、撮影位置を探すことだけではありません。近くでは一枚ずつ見えた窓が、離れるにつれて長い列に戻る。ドームが建物の中で占める大きさが変わって見える。歩く距離に応じて建築の印象が変わるので、同じ方向を何度か振り返ってみてください。

散策の範囲を広げるなら、駅前で建築を眺める日と、皇居周辺の緑まで歩く日を分けてもよいでしょう。さらに濠沿いの風景へ関心が向いたら、皇居の北西側にある千鳥ヶ淵緑道も候補になります。

駅前に隣接する場所ではないため、別の散策区間として移動と時間を考えてください。

また、都市を支えてきた交通の仕組みに興味が湧いたら、川を渡る橋にも視線を移してみましょう。中央区の「かちどき 橋の資料館」を調べて、別の日の街歩きにつなげる方法もあります。駅で線路と街の関係を考えたあとなら、橋が人や物の移動をどう支えたかという問いも、身近なものになるはずです。

列車に乗る予定がある日は、見学を終える時刻を先に決めておくと安心です。改札の外へ出る時間、目的のホームへ戻る時間は、建物を見る時間とは別に必要になります。

駅舎だけを眺める短い散歩も、美術館を含めて過ごす半日も、予定に合わせて選べるのが東京駅のよさです。

まとめ|乗り換えの駅を、訪ねる場所に変える

東京駅の赤レンガ駅舎には、近代の鉄道を結ぶ構想と、戦災後も駅を使い続けた日々、建物を残しながら姿を取り戻した仕事が重なっています。ドームの装飾を見上げることも、壁のレンガに注目することも、その長い時間を知る入口になります。

初めてなら、丸の内の広場と南北どちらかのドームから。もう少し知りたくなったら、美術館を訪ねたり、駅舎から離れて街の中での姿を眺めたりしてみてください。

「次はあの部分を見よう」と思えるものが一つ見つかれば、散歩は十分に豊かになります。

次に東京駅を使うとき、乗り換えの前後に少しだけ地上へ出てみませんか。行き先へ急ぐための駅に、足を止めて見たい場所が増えているかもしれません。

おでかけ前に情報をチェック

  • 丸の内駅舎の見どころ
    東京駅丸の内駅舎の外壁、赤レンガ、ドーム内部の装飾など、建物の注目ポイントを事前に確認できます。現地で「どこを見ればいいのか」を把握してから歩きたいときに便利です。
  • 東京駅の構内図
    改札口、出口、ホーム、エレベーター、乗り換え動線などを確認できます。東京駅は構内が広いため、丸の内側へ出たいときや、待ち合わせ場所を決めたいときにも役立ちます。
  • 東京ステーションギャラリー
    東京駅丸の内駅舎内にある美術館の公式サイトです。開催中の展覧会、開館時間、休館日、入館料などを確認でき、駅舎見学とあわせて立ち寄りたいときに便利です。

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