
はじめに
夏でも涼しい風が流れ、雲の影が静かに山を渡っていく。
新潟県妙高市、標高1300メートルの笹ヶ峰高原は、まるで“空と地のあいだ”に浮かぶ楽園のような 秘境 です。
広大な牧草地、白樺林、そして湖面に山々を映す 絶景 「乙見湖(おとみこ)」。
この地では、時間がゆっくりと流れ、風の音さえも優しく聞こえます。
かつて修験者たちが歩いたこの高原の道は、今も人の手が入りすぎず、自然の呼吸がそのまま残っています。
訪れるたびに、空の色が違う。
雲が描き、風が消していく――その繰り返しが、笹ヶ峰の一日です。
旅の目的が「動くこと」ではなく、「静かに見ること」になる。
そんな贅沢がここにはあります。
風が主役の高原へ


上信越国立公園の一角、妙高市に広がる笹ヶ峰高原。
夏でも涼しく、白樺林と牧草地がどこまでも続く。
その中心にある乙見湖(おとみこ)は、風が止むと鏡のように山々を映し出します。
ここには観光地的な喧騒はなく、聞こえるのは鳥の声と風のさざめきだけ。
訪れる人々は皆、思わず声をひそめるほどの静けさに包まれます。
乙見湖 ― 火山が生んだ“鏡の湖”


乙見湖は、数万年前の地すべりによって自然に形成された湖。
火山性の地質ゆえに水質が澄み、季節や天候によって湖面の色が変化します。
朝は淡いブルー、昼は深緑、夕暮れには金色。
風が止まると、湖面には妙高山と雲が完璧なシンメトリーで映り込みます。
写真家たちが「新潟の隠れた奇跡」と呼ぶ理由がそこにあります。
笹ヶ峰高原 ― 自然と祈りが共存する場所

笹ヶ峰は古くから修験者が白山・戸隠へと向かう巡礼路の一部でした。
いまもブナ林の奥に祠がひっそりと残り、
自然信仰と人の祈りが共に息づいています。
夏は牧場が青く輝き、秋は紅葉のグラデーションが湖を染める。
その美しさは派手さよりも“深い静寂”にあります。
アクセス情報

- 所在地:
新潟県妙高市大字杉野沢 笹ヶ峰高原
- 標高:
約1,300m
- 開通期間:
6月上旬〜10月下旬(冬季閉鎖)
- 車でのアクセス:
上信越自動車道「妙高高原IC」→県道39号経由で約30〜40分
途中カーブ多く狭路あり、小型車推奨
- 公共交通:
北陸新幹線「上越妙高駅」→えちごトキめき鉄道「妙高高原駅」
妙高高原駅から季節運行「笹ヶ峰直行バス」(7〜10月・約40分)
- 駐車場:
乙見湖駐車場(無料25台+第二駐車場40台)
- 注意点:
標高が高く、夏でも朝晩10℃台。防寒具必携。携帯電波は一部圏外。
ベストシーズンと過ごし方

- 6〜7月:白樺林の新緑と朝霧。夢見平遊歩道(往復約2時間)が最も美しい。
- 8月:放牧シーズン。牧場の牛たちが絵のように点在。
- 10月:紅葉ピーク。乙見湖の周囲が赤と金に染まる。
おすすめ撮影ポイント
- 乙見湖木製デッキ(朝・夕)
- 牧場上の展望台(妙高山を正面に望む)
- 白樺林の小道(逆光時が美しい)
周辺スポット
- 苗名滝(日本の滝百選)…車で25分
- 妙高温泉郷…車で40分
- 池の平温泉スキー場…夏は高山植物園に
まとめ ― “静けさ”を旅する贅沢

笹ヶ峰高原と乙見湖には、観光の派手さも娯楽もありません。
しかし、風と光の変化を見ているだけで、心の奥が静まっていく。
旅の目的が「見ること」から「感じること」に変わる場所です。
都会の時間を忘れ、風と雲に身を委ねる。
その瞬間、あなたも自然の一部になることでしょう。




