国宝 犬山城 観光ガイド│木曽川を望む天守と城下町

はじめに

愛知県の北端、木曽川の断崖上にそびえる 犬山城 は、現存12天守のひとつであり、日本最古級の天守をもつ 国宝 の城です。
1537年(天文6年)に織田信長の叔父・織田信康(信安)が築いたと伝わり、江戸時代には成瀬氏が代々城主を務めました。明治以降も天守は破却を免れ、濃尾地震や戦災をくぐり抜けた木造の姿を今に伝えています。

現在は公益財団法人によって管理・公開され、国内外から多くの人が訪れる人気の観光地となっています。
本記事では、犬山城の歴史や建築の特徴、見どころ、季節ごとの魅力、アクセスやモデルコースまでを詳しく解説します。

日本の国宝

2025年現在、以下のの5つの現存するお城が日本の「国宝」に指定されています。

  • 姫路城(兵庫県姫路市)※世界遺産
  • 松本城(長野県松本市)
  • 犬山城(愛知県犬山市)
  • 松江城(島根県松江市)
  • 彦根城(滋賀県彦根市)

国宝の城とは? ここをclick

「国宝」とは

国宝とは、日本の文化財の中でも特に価値の高いものに与えられる特別な称号です。

お城だけでなく、寺や神社、絵画、仏像なども国宝に指定されていますが、お城の場合は、「天守」と呼ばれる中心の建物や、「やぐら」「門」「塀」などの部分が国宝に指定されます。

つまり、「城全体」が国宝というより、「特定の建物」が国宝として守られているのです。

どうやって選ばれるの?

次のような三つの条件を満たしたお城だけが「国宝」に指定されています。

  1. 歴史的に重要であること
    その城がどんな時代に建てられ、どんな出来事とかかわったのか。
  2. 建て方や形が優れていること
    木の組み方、屋根や壁のつくりなどに、その時代の最高の技術が使われているか。
  3. 昔の姿がよく残っていること
    修理や再建をくり返していても、もとの部材や形がしっかり残っているか。

現存天守って何?

「現存天守」とは、昔に建てられた天守が火事や戦争で壊れずに、今もそのまま残っているお城のことです。
日本には100以上の城がありますが、現存天守があるのはわずか12城しかありません。

国宝の城5つはすべてこの「現存天守」を持っています。
だからこそ、何百年も前の木や釘、壁の白漆喰(しっくい)などを、実際に自分の目で見ることができるのです。

なぜ5つだけが国宝なの?

昔の日本では、明治時代の「廃城令(はいじょうれい)」などによって、多くの城が取り壊されました。
さらに、戦争や火災、地震で失われた城も多くあります。

そんな中で、建てられた当時の姿をほぼ保ったまま残っているお城が、この5つだったのです。
いずれの城も修理をくり返しながら大切に守られ、今では「日本の宝」として国が保護しています。

国宝の城は、ただの観光地ではなく、日本の歴史や技術、そして人々の思いが積み重なった「生きた文化財」です。
それぞれの城には、時代を生き抜いてきた物語があります。ぜひ一度、足を運んでみてはいかがでしょうか。

犬山城 の歴史と成り立ち

戦国時代の築城と城主の変遷

犬山城 が建てられたのは1537年(天文6年)とされ、尾張北部の要衝を押さえるために築かれました。
木曽川の流れを天然の堀とし、断崖の上に立つこの城は、戦国の世において防御と見張りの両面で極めて重要な位置にありました。

織田氏の勢力拡大とともに城主は変わり、豊臣政権の時代には石川氏が改修を行ったとされています。
現在の天守の姿はこの頃に近い形へ整えられたと考えられています。

関ヶ原の戦いの後、犬山城は尾張徳川家の重臣・成瀬氏の支配下に入りました。
江戸時代を通じて成瀬家が代々城主を務め、幕末から明治維新までその姿を保ち続けました。

明治以降の保存と所有の変遷

明治維新の廃藩置県によって多くの城郭が取り壊される中、犬山城 の天守は奇跡的に残されました。
1891年の濃尾地震では被害を受けましたが、修復を条件に天守は成瀬家に返還され、以降、長く私有の天守として知られる存在となりました。

1960年代に行われた解体修理で構造が詳しく調べられ、天守が当初材を多く残す最古級の木造建築であることが確認されました。
かつて唱えられていた「移築説」はこの調査で否定されています。

2004年には所有権が公益法人に移され、国宝としての保全・修復・一般公開が進められています。

国宝指定と現存天守の意義

犬山城は、姫路城・松本城・彦根城・松江城と並ぶ「国宝五城」の一つです。
「現存天守」とは、江戸時代以前に建てられ、火災や戦災、再建を経ずに木造のまま現存している天守を指します。
犬山城はその中でも最古級の建築とされ、戦国から江戸初期の技術を伝える貴重な文化財です。

建築の特徴 ― 小ぶりながら実戦的な構造

望楼型天守とは

犬山城の天守は「望楼型(ぼうろうがた)」と呼ばれる形式で、下層に力強い二層構造、その上に物見の望楼を載せた造りです。
外観は三重三階に見えますが、内部は四階建て、さらに地下に二階分の構造を持つ複雑な立体構成となっています。

この形式は初期の天守に多く見られ、実用性と象徴性を併せ持つのが特徴です。
下層は防御と指揮の拠点、上層は眺望と権威の象徴として機能していました。

防御と美の両立

天守の内部には、敵の侵入を防ぐための狭間(矢・鉄砲を放つ穴)や石落としが随所に設けられています。
外観には派手な装飾は少なく、質実剛健な印象を与えます。

最上階には木製の外周回廊がめぐり、ここからは木曽川、濃尾平野、遠く伊吹山まで一望できます。
風が強い日も多いため、帽子やカメラの落下には注意が必要です。

石垣と立地

天守台の石垣は、自然石を積み上げる「野面積み(のづらづみ)」で、戦国期の特徴を色濃く残します。
背後の木曽川と断崖が天然の堀となり、「後堅固(うしろけんご)」と呼ばれる防御的な構えを形づくっています。
比高(断崖から川面までの高低差)は約50メートル。天守の規模は小ぶりでも、地形と一体化した防御性は極めて高いものです。

犬山城 の観光情報(2025年現在)

  • 開館時間:9:00〜17:00(最終入場16:30)
  • 休館日:12月29日〜31日
  • 入場料:大人550円/小中学生110円
  • 所在地:愛知県犬山市北古券65-2
  • 所要時間の目安:60〜90分
  • 問い合わせ先:0568-61-1711(犬山城管理事務所)

館内は地下2階から最上階へと一方通行で見学でき、内部には展示や当時の構造模型もあります。

アクセス

電車・徒歩

名鉄名古屋本線・犬山線「犬山駅」から徒歩約20分。
駅から城下町の本町通りを抜けて向かうルートが定番で、町家やお店を楽しみながら登城できます。
また、木曽川沿いの「犬山遊園駅」からも徒歩約15分で到着します。

名神高速道路「小牧IC」または中央自動車道「春日井IC」から約25分。
城下町周辺には市営駐車場とコインパーキングがありますが、週末や桜の季節は満車になりやすいため早めの到着が安心です。

犬山観光ナビ

犬山城の見どころ

最上階の回廊

天守の最上階にある木製の回廊は、犬山城 最大のハイライトです。
木曽川が蛇行しながら流れる様子、濃尾平野の広がり、遠くの山並みが一望できます。朝は光の反射、夕刻は逆光のシルエットが美しく、撮影スポットとしても人気です。

城下町・本町通り

登城ルートの途中にある城下町「本町通り」は、黒格子の町家や古民家カフェ、土産店が並ぶ情緒あるエリアです。
食べ歩きグルメも豊富で、五平餅や味噌田楽、小倉トーストなど名古屋圏ならではの味が楽しめます。

三光稲荷神社

犬山城の南麓に位置し、無数の赤い鳥居が連なる参道がフォトジェニックな神社です。
ハート形の絵馬や恋愛成就のご利益で若い女性にも人気。登城の近道としても便利です。

有楽苑と国宝茶室「如庵」

犬山城から徒歩圏内にある有楽苑には、織田有楽斎が建てた茶室「如庵(じょあん)」が移築・保存されています。
江戸初期の茶の湯建築の名品で、こちらも国宝に指定。
「武」と「茶」が共存する犬山という土地の奥深さを体感できるスポットです。

季節ごとの 犬山城

春 ― 桜と犬山祭の華

木曽川堤や城下町の桜が一斉に咲く春は、犬山城が最も輝く季節です。4月第1土曜・日曜には「犬山祭」が開催され、13台の山車がからくり人形を披露します。
夜には365個の提灯が灯り、幻想的な夜桜の景観を作り出します。

夏 ― 木曽川の青と天守の白

緑が濃くなり、川面が輝く季節。
夕暮れの逆光で天守が黒いシルエットとなる姿は圧巻です。
城下町ではかき氷や冷たい甘味処も多く、夏の涼を楽しめます。

秋 ― 紅葉と水鏡の景色

秋は澄んだ空と紅葉が見どころ。天守と木曽川が水面に映る「逆さ犬山城」は撮影スポットとして人気です。
紅葉シーズンは早朝の訪問が混雑を避けやすいでしょう。

冬 ― 凛とした白と黒の世界

木々の葉が落ち、天守の輪郭がくっきりと見える冬。
雪が積もると、白壁と黒漆喰のコントラストが際立ちます。
静かな季節にこそ、建築の美しさをじっくり堪能できます。

半日・1日モデルコース

半日コース(約3時間)

09:00 名鉄・犬山駅着 → 本町通りを散策
09:30〜10:30 犬山城(登閣・外周回廊)
10:40〜11:10 三光稲荷神社参拝
11:20〜12:00 城下で昼食(味噌カツ・田楽など)

1日コース(約6〜7時間)

09:00 犬山駅 → 城下町散策(古民家カフェで休憩)
09:45〜11:15 犬山城(展示・天守内部見学)
11:30〜12:30 昼食(ひつまぶしやきしめん)
13:00〜14:30 有楽苑・如庵(茶室鑑賞)
15:00〜16:00 からくり展示館や資料館見学
16:30 木曽川堤で夕景撮影 → 夕食・解散

口コミ・来訪者の声

  • 「最上階の回廊からの景色が最高!木曽川の流れと濃尾平野の広がりに感動しました。」
  • 「天守の木の香りが心地よく、梁や柱の造りが間近で見られます。」
  • 「城下町の食べ歩きとあわせて楽しめるのが魅力。」
  • 「階段が急なのでスニーカーがおすすめ。」
  • 「三光稲荷神社の鳥居は写真映え抜群!」
  • 「如庵を見学すると、城と茶の湯文化が一日でつながります。」

マニアックな見どころ

  • 望楼型天守の謎
    かつては「他城から移築された」との説もありましたが、解体修理で同時期の材が使われていることが確認され、建設当初からの構造であると判明しました。
  • 比高約50メートルの断崖立地
    木曽川が天然の堀として機能し、規模の小さな城ながらも極めて攻めにくい構造になっています。
  • 狭間の観察
    階層ごとに矢狭間・鉄砲狭間の位置や角度が異なり、近距離戦と遠距離戦を想定した設計が見られます。
  • 成瀬家と三光稲荷神社
    城主家が守護神として信仰し、鳥居の参道は登城路の目印としても機能していました。
  • 天守の細部
    最上階南北面にある華頭窓(かとうまど)や、唐破風(からはふ)屋根など、初期天守ながら格式を備えた意匠が見られます。

実用メモ

  • 混雑回避
    桜や犬山祭の時期は朝早い時間帯が快適です。
  • 服装
    急な階段が多く、動きやすい靴が必須。
  • 安全対策
    回廊では風が強く、帽子やカメラの落下に注意。
  • 撮影ポイント
    木曽川堤から望む全景、三光稲荷神社の鳥居と天守、回廊からの360度パノラマ。

※ 営業時間や料金は変更の可能性があるため、お出かけ前には公式サイトで最新情報の確認を。

まとめ

犬山城は、戦国の実戦性と江戸の美意識を併せ持つ稀有な城です。
天守そのものの保存状態が良く、木造建築の温もりと当時の技術を直接感じ取ることができます。
また、城下町・神社・茶室が徒歩圏にまとまっており、歴史・文化・グルメ・風景を一度に味わえるのが魅力です。

小ぶりながらも深い存在感を放つ 犬山城。
日本の城文化の原点に触れたい方にとって、訪れる価値のある一日になるはずです。

この記事の英語ページはこちら↓↓↓

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